25号(1998年1月)


TIN News Update, 15 December,1997
Foreign Aid Worker Forced Out, EU Project under Scrutiny

外国の支援者強制退去、欧州連合のプロジェクト見直しを迫られる

中国政府は、最も経験を積んだ外国の支援者の1人をチベットから退去させ、また他に
この地域で長期間支援活動を行っている2人のヨーロッパ人の、滞在許可を更新するの
を期限が来るずっと前から拒否したことが判明した。


外国の支援者たちが直面している難題について、中国政府はその理由を説明してはいな
い。しかし、欧州連合にとっては大きな問題となっている。欧州連合は、チベットにお
いて懸案となっている開発計画のために、760万エク(600万ポンド、12億5千
万円)を中国に援助するとの大きな協定に、今月調印する予定であった。

チベットの援助計画に資金を調達する欧州各国の政府は、今日まで支援者に対して制約
が課されていることに気が着いていなかったようだ。今日の朝、英国の新聞インデペン
デントがこのニュースを報道した後でも、まだこの問題の位置づけに苦慮しているよう
だ。欧州議会の高官は今晩、中国がこの決定を見直すまでプロジェクトを凍結すべきだ
と発言した。

ブリュセルにある欧州連合の外交指針部の広報官は、欧州連合のプロジェクトのことを
知らなかったと語った。また北京に駐在する欧州連合の代表からは、チベットでのビサ
問題に関する情報提供要請にも、またプロジェクトの現状報告要請にもまだ回答がない
と語った。

過去6年間チベットの農村部で環境および教育プロジェクトを実施して来た、ロンドン
に拠点を置く児童救済基金(Save the Children Fund)は、ただ1人の専門的知識を持
った現地代表に、今年7月滞在許可がおりなかったことを認めた。この代表は、30才
の女性で過去3年間教育顧問として、チベットで働いて来た。

「我々の教育顧問が、プロジェクトに関与できなくなったことは、非常に残念である。
しかし、彼女はプロジェクトを立ち上げるために、チームを作って仕事をして来たか
ら、チベット人のスタッフが仕事を続けるだろう」と、その女性の氏名を伏せて、児童
救済基金の広報官は昨日インデペンデント紙に語った。12月現在、児童救済基金のプ
ロジェクトは、5カ月間もアドバイザーがいない状態が続いているが、児童救済基金は
この説明されざる障害にもかかわらず、プロジェクトを続行する計画である。

Medecins sans Frontiers Belgium(MSF)がチベットに派遣している医療チームの
中心メンバー2人も、今年6月滞在許可期間が短縮されたことが判った。中国の役人
は、この2人の専門家が長くチベットに居過ぎたと述べたと伝えられている。MSFの
高位の職員がラサに飛びこの問題について協議をし、2人がチベットで働く部分的な許
可が出された。

欧州の複数政府、事実関係を調査

英国の国際開発庁は、1996年4月以来チベットの村落部で児童救済基金が実施して
いる教育プロジェクトを援助して来たと、今日語った。「我々が彼らのプロジェクトを
資金的に援助し始めたとき、6年間のプロジェクトであると児童救済基金から聞いた」
と、広報官は語った。彼は、昨日まではどうしてもコメントを出そうとはしなかった。
同広報官によれば、英国の外務省は「事実関係を調査して、必要な措置を取る」と語っ
たという。

ノルウェーの外務省は、児童救済基金とMSFのプロジェクトに、少なくとも5万ポン
ドの援助をしていると思われるが、「事実関係が判明するまでは」コメントを出さない
と今日語った。このことは、プロジェクトの関係者に加えられている制約に気がついて
いなかったということである。

ノルウェーの国務相補佐官ジャン・ハーランド・マトゥレイは、先週オスロを訪れたチ
ベット自治区主席を団長とする使節団を出迎えたが、この事態に当惑していることであ
ろう。この使節団には、チベット自治区の経済貿易担当部門の副部長ワン・ジャーユが
参加していた。ワンの部署は,児童救済基金の専門家の実際的な追放にも、また今月調
印された欧州連合のプロジェクトの実現にも、直接責任を負うべき部署である。

欧州連合のプロジェクトは、ラサの南方200kmに位置するパナム郡の潅漑施設と社
会基盤整備のために、1994年に構想されたものである。当時は、欧州連合が中国と
交わした最も高額な取引であった。このプロジェクトは、議員やチベット支援組織から
の批判で1995年に中止となった。チベットへの中国人流入を促進する恐れがあり、
充分な検討がなされないまま計画が立てられて、構想がお粗末であるとの批判が出され
たためであった。

1995年5月欧州議会は決議を採択し、委員会に対して次のような呼びかけを行っ
た。チベット関連の今後の提案は、「公開の場で充分な検討をすべき問題」であること
を確約し、小規模なプロジェクトに関係している非政府組織にも開発援助資金を投入す
るようにというものであった。

ウェールズの議員グレニーズ・キノック女史が今夜出した声明によれば、サー・レオン
・ブリタンは1997年1月、このプロジェクトのこれからの企画は「公開の場で透明
な形で」立てられよう、またMSFや児童救済基金の参加は、「プロジェクト実現のた
めに尊重されよう」と語ったという。

欧州連合が再検討した実行計画書の最終案は、今月調印されることになっているが、ま
だ公開されてはいない。パナム・プロジェクトの教育・衛生分野には、地域の専門知識
を持った外国非政府組織が、振り分けられることになる見込みであるという。

児童救済基金は、現在のところこのプロジェクトには参加できない、と言っている。
「パナムは、我々が注目して来たプロジェクトだ。しかし、この教育アドバイザーがい
ないことには、計画を実行することはできない」と、昨晩この団体の広報官は語った。
MSFも、もっと貧しい地域で活動したいから、現在のところ欧州連合のプロジェクト
には参加しないであろうという。

キノック議員は、「現実的に活動している非政府組織の参加が保証されるまでは、プロ
ジェクトを中止する」ように、欧州連合に対して呼びかけた。

「欧州議会は、非政府組織がパナムに参画すべきであると、常に言明して来た。このプ
ロジェクトの利益を享受するのがチベット人であることを確認できる、独立した機関の
人間が現地にいる必要がある。もし現在得ている報告が正しいのだとするならば、中国
政府はそれを望んでいないとしか思えない」と、キノック議員は今夜発表した声明で述
べている。「中国側が妥協するか、欧州連合側がプロジェクトを中止し見直しをするか
の、どちらかしかない」と、キノック女史は語った。

以上

(翻訳者 小林秀英)


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TIN News Update, 18 December, 1997
EU Tibet Project Suspended

欧州連合のチベット・プロジェクト中止

欧州連合は、昨日600万ポンド(12億5千万円)に上るチベット開発プロジェクト
を中止した。これは、中国政府が過去5カ月間英国人女性専門家のチベット滞在を許可
していないと、英国の新聞が報じたのを受けてのことである。


欧州連合の副委員長サー・レオン・ブリタンの広報官は、この突然のニュースを爆弾に
譬えてのように語った。サー・レオンは、状況が明確になるまで欧州連合のプロジェク
トに関連する活動を、すべて中止することを決定したと。

英国の非政府組織である児童救済基金(Save the Children Fund)は、このプロジェク
トを継続させるためにチベットに滞在している唯一の西洋人である、教育の専門家の滞
在許可を、過去5カ月間受け取ってはいないと、英国の新聞インデペンデントが月曜日
(12月15日)に報じた。同新聞によれば、1991年以来この非政府組織はラサで
幾つかのプロジェクトを実施して来た。この非政府組織の度重なる問い合わせにも拘わ
らず、中国政府はこの事実上の追放の理由を明らかにはしてはいないという。

欧州連合は、ラサの南西200kmに位置するパナム郡の地域開発プロジェクトに、こ
の英国人専門家とそのチームを参加させる予定であった。5カ年のプロジェクトに欧州
連合が計上している予算は589万ポンドで、この地域の潅漑事業や、衛生、教育の向
上を目指すものであった。

パナム・プロジェクトの資金提供に関する最終的な協定は、以前にも様々な論議を呼ん
だ関係で既に2年間遅れているが、これから10日間の内に欧州連合と中国の間で調印
される予定であった。

サー・レオン・ブリタンの政治顧問ニック・クレッグは、「サー・レオンはこの報告に
対して、極めて率直な反応を示した。非政府組織がこのプロジェクトに参加すること
は、非常に重要なことだという意見は揺らいではない。何が起きているのかを我々が確
認するまでは、あらゆる事務的な作業も政治的な手続きも凍結することになる」と、ク
レッグ氏はTINに語った。

サー・レオンの事務所は、児童救済基金のチームがこんな問題に直面していることを全
く知らなかったと、クレッグ氏は言う。「月曜日のニュースは、我々にとって爆弾のよ
うなものだった」と、彼は語った。

しかし欧州連合の中国部門の責任者フキエン・フォチデスは、彼の部署は2週間か4週
間前から児童救済基金の専門家に対する滞在許可が遅れていることを知っていたと、昨
日語った。

「サー・レオンは、現在何が起きているのかを正確に把握すべく、北京に問い合わせを
行っている。この問題が北京の指示によるものなのかどうか、また事務的な間違いなの
かそれとも意図的な嫌がらせなのかを確認する必要がある」と、クレッグ氏は語った。
「我々が関知している限りでは、中国はパナム・プロジェクトに関する我々の条件に同
意していた筈であるし、我々の方では調印する予定であった」と、彼は付け加えた。

ノルウェー「懸念を抱く」

児童救済基金に資金援助をしている2カ国の政府の内の一方は、このプロジェクトで中
心的な役割を果たしている顧問が、11月に私物を取りに帰って1週間チベットに滞在
したことを除けば、昨年7月からチベットで活動することを許されていないことを知ら
なかったことが、昨日判明した。この顧問は30才の英国女性で、過去3年間ラサで活
動して来た。

「この件は我々の懸念の元となっており、今後もこの問題を注目して行く」とノルウェ
ー外務省アジア課の課長ペル・スタブナンは語った。ノルウェー政府は、ノルウェーの
児童救援組織レーデ・バルナを通じて、チベットの児童救済基金のプロジェクトに年間
5万ポンド(1040万円)を援助している。ノルウェー外務省は先週、チベット自治
区の指導者から成る使節団を出迎えたばかりである。その使節団には、パナム・プロジ
ェクト実行の所轄部門であり、児童救済基金の顧問に滞在許可を出さなかった自治区対
外貿易経済部の高官も含まれていた。

児童救済基金がチベットで実施しているプロジェクトのもう一方の資金提供者である英
国政府は、この問題に関する情報を収集していると語った。「我々が得ている情報で
は、地元のスタッフによって活動は継続している」と、国際開発部門の広報官は昨日T
INに語った。

ロンドンの中国大使館は、インデペンデント紙の記事を読んだ、と昨日語った。しかし
記事には児童救済基金の女性顧問の名前が出ていなかったので、北京に事情を問い合わ
せることはできなかった、と語った。

児童救済基金はパナム・プロジェクトについて「考慮中」

ロンドンの児童救済基金の広報官は、滞在許可が拒否されたことは計画されているパナ
ム・プロジェクトに、参加するか否かの決定に影響を与えることになろう、と語った。

「教育顧問として活躍している人がいなければ、プロジェクトを先に進めることはでき
ない」と、広報官は語った。しかしもし決定が翻されるならば、プロジェクトに参加す
るように考慮することにやぶさかではない、と付け加えた。児童救済基金は、パナム・
プロジェクトに関する欧州連合と中国の最終的な協定の写しを受け取るのを待ってい
る、と彼は語った。

1995年このプロジェクトの元の計画に対する批判に対処するために、サー・ブリタ
ンは西洋の非政府組織をプロジェクトに参加させることを約束した。以来非政府組織
が、パナム・プロジェクトの中心的な役割を果たして来た。欧州議会および複数の非政
府組織は、元のプロジェクトがチベット人に利益を与える目的なのか、それとも同地域
への漢人入植者を増加させることにつながるのか、それが明確ではないと批判したので
あった。

今年1月、中国政府はチベットに詳しい非政府組織の専門家をプロジェクトに参加させ
るとの同意書を撤回した、と伝えられている。しかし同月後半にサー・レオン・ブリタ
ンは、非政府組織の参加は「プロジェクトの実施に盛り込まれている」と欧州議会に保
証したと、議員のグレニー・キノックは昨日出した声明で述べた。

欧州連合の職員らによって最終的に作成された協定は、主要な受益者をチベット人と特
定していると伝えられている。中国側はこれまで『地元民』という用語を使い、地元に
関する知識の豊富な非政府組織の参加は『前向きに検討される』と、協定に記述するよ
うに提案していた。

1995年9月に欧州連合に提示されたパナム・プロジェクトの最終的な予算は、欧州
連合が760万エク提供する。その内の24パーセント、割合では最大となるが、これ
が意見聴取と調停費用となる。19パーセントが、衛生・教育関係の小規模なプロジェ
クトに割り当てられ、ここに非政府組織の活動も含まれる。9パーセントが、チベット
人を地域外の訓練に派遣する費用となる。残りは、潅漑、獣医の費用、農業訓練、飲料
水の供給費用等に当てられる。

計画には中期的な期間で派遣団を送ることも盛り込まれており、5年間で外国人の専門
家の数も、月当たり166人から237人に増やすことになっていた。月当たりの人件
費が16000エク(19800ドル、257万4千円)で、予算の半分強に当たる。

以上

(翻訳者 小林秀英)


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TIN News Update, 8 January, 1998
Snow Disaster in Tibet

チベットで雪害発生

昨日、高位の中国人役人で構成されたチームがラサに飛び、雪嵐に襲われたチベット人
たちの救援に取り掛かった。数多くの報告が、事態の深刻さを伝えている。

ラサ市政府当局者は、彼らが広範な救援活動を行ったので、ラサの北方250kmに位
置するナクチェ県では犠牲者はでなかったと語った。しかし非公式情報が伝えていると
ころでは、事態は次第に悪化しているという。隣接する青海省では、役人たちは外部の
支援を求めていると伝えられている。

ナクチュの状況について、「政府の災害救援活動が迅速であったので、事態は対処可能
な状態である」と、チベット自治区副主席のツェリン・サンドップ(中国名はシーレン
・サンギュ)は語ったと、『チャイナ・デイリー』は先週伝えた。「中央政府と国中の
人民の支援のお陰で、闘いに勝つことができる」と彼は確信していると、12月30日
付けの新華社電は報じている。

「公式な統計数値の示すところでは、ナクチュは大量の穀物と家畜飼料、および3万点
に上る衣類や毛布や他の援助品を受け取り、配布した。これは中央政府および地方政府
の広範な努力の賜物である」と、1月5日(月)付けの新華社電は報じている。

チベット自治区政府は、救援資金として2725万元(338万ドル、4億4千万円)
を計上した。また火曜日には、軍は8千着のコートと4千枚の毛布を、『極めて激しい
雪嵐』に襲われたナクチュ、ガリ、シガッツェの各県で供出したと、新華社電は伝えて
いる。

水曜日には、11人の国務院の高官から成るチームが、北京を発ってラサに到着した。
これは「状況を把握し、地方政府の支援活動を助けるためである」と、過去4日間で同
災害を伝える5回目の報道は語っている。このチームの到着は宣伝工作の一環であるの
か、あるいは災害の対応に苦慮している地方政府の求めに応じてのことなのかは不明で
ある。

青海省、支援を求む

青海省の玉樹(ジェクンド)地区では被害は甚大だと伝えられており、青海省政府は公
式な声明を出してはいないが、西洋の支援組織に救援を求めて来ているという。ベルギ
ーのブリュセルに本部を置く Medecins Sans Frontiers(MSF)は、青海省の省都西
寧から救援依頼を受け取った、と語った。

MSFのスイス支部は、青海省南部の玉樹(ジェクンド)州のナンチェンに援助隊を置
いており、玉樹州の高地の状況を把握する準備を進めていると伝えられている。

「冬に入ってから12月の20日までに、14回の降雪があった。気温が低いために雪
は解けていない」と、ザドォ(中国名:雑多)の役人は語った。ここは、玉樹州でも最
悪の被害を受けている地区の一つである。2年前の雪害では、100万頭の家畜の3分
の2を失っている。

「渓谷によっては、雪の深さは66cmに達している。牧草は雪に覆われおり、家畜は
何も食べるものがない」と、同役人は述べた。「雪は降り続いており」、家畜の飼料と
燃料が不足すると、彼は予想している。

先月同地区を訪問した西洋人は、事態の深刻さを確認している。「11月の末に、私は
雪嵐を体験した。一晩で20cmから30cmの降雪があった」と、彼はTINに語っ
た。

月曜日に問い合わせをした青海省気象台は、1月中旬および下旬には、玉樹(ジェクン
ド)でさらに降雪が予想され、気温も上がらず、現在積もっている雪も解ける見込みが
ない、と述べた。

主要燃料である家畜の糞が取れないと、遊牧民の多くも凍傷に罹ってしまう。また家畜
が餓死するのを防ぐために、自分達の食糧を与えると、遊牧民が餓死する危険性に襲わ
れることになる。

ナクチュで40回の降雪

ナクチュでは、今年の冬は9月に始まった。昨年よりも50日も早いと、自治区副主席
のツェリン・サンドゥプは12月30日に語った。12月末までには40回の降雪があ
り、24時間で10cmの割りで積もったと、彼は北京で報道陣に語った。

同県の家畜総数の1パーセントに当たる、10万頭の家畜がこれまでに死亡したと言わ
れている。地域によっては、気温が氷点下34度にまで下がった所もあると、副主席は
語った。チベット自治区が気象観測記録を付け始めて以来、最悪の降雪量だと伝えられ
ている。

昨日ラサから発せられたニュースでは、ナクチュ地区では「秩序と落ち着きが保たれて
おり、ナクチュの町では新鮮な肉と野菜が、充分に補給されている」と強調している。
しかし、中央政府レベルの役人たちは事態をもっと冷静に判断しており、救援活動を
「現状で安定した状態」とだけ評しており、被害者たちが自ら問題を解決するように促
している。

「国家は積極的な支援を行っているが、災害の被害者たちは生産活動に従事することに
よって自助努力をしなければならない。また草の根レベルの幹部たちは、自助計画を立
てなければならない」と、副主席の陳クイアンと顧問のリー・グイシャンは語ったと、
12月29日付けのチベット・テレビは伝えている。これが伝えられる限りでは、唯一
北京の高官が雪害に対して発したコメントである。

「国家は財政的な困難な状況にあるが、地元民にできうる限りの支援を与え、実際的な
問題解決のために可能な限りの手段を使うであろう」と彼らは述べたと、BBCが傍受
したテレビ放送は伝えている。「政府のあらゆる部門は、災害に勝利しまた被害者たち
を救援するために、集中的に働くことを要求されている」と、この2人の高官は語った
と伝えられている。

1996年の雪害からようやく復興しようとしていた地域にとって、今回の雪嵐は新た
な脅威となっている。ユシュでは前回の雪害で家畜を全て失った遊牧民が、まだ移転を
待っている。MSF等の西欧の支援団体は、1996年にもユシュで食糧や燃料を遊牧
民に配布する活動をしていたが、今回も幅広い支援活動を行っていると、最近この地域
から帰って来た西洋人支援者は語っている。

生活環境が悪化して、ユシュ地区の遊牧民の生活は、もう既に困難に陥っている。「地
元民たちは、もっと重大な問題について心配している。牧草が既にもう非常に痩せて来
ている」と、匿名希望のこの西洋人は語った。

「狐のような中規模の大きさの野生動物は、完全に死に絶えてしまった、と人々は口々
に語っており、大変な問題だと考えているようだ」と、彼は語った。青海省高地の牧草
地帯は、草の根をかじって生きている、リスに似た生き物のピカが異常に増殖し、大き
な被害を受けている。「全く被害を受けていない牧草は見られない程だ」と、その支援
者は語った。

青海省政府は、これまで4種の計画を実施して来た。冬季の餌場を確保するために、牧
草地をフェンスで囲うこと。冬季に家畜を保護する畜舎を建設すること等である。しか
し懸案問題として、遊牧民の定住化を図る計画もあるが、牧草地の回復には時間が足り
ないのが実情である。チベット自治区においては、役人たちは毎年余分な家畜を処分し
て家畜の数を制限するように遊牧民に命令を発し、牧草地が劣化するのを防ごうとして
いる。

以上

(翻訳者 小林秀英)


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TIN News Update, 14 January, 1998
Five Children Die in Tibet Escape Attempts

亡命を企てた少年5人がチベットで死亡

5人の少年を含む6人のチベット人が、先月チベットを脱出しようとして死亡した。激
しい雪嵐がヒマラヤの峠を襲った直後であったと、カトマンズーに到着した生存者は語
った。

12月初旬にエベレスト山の近辺で3日間にわたって雪嵐が吹き荒れ、巻き込まれたグ
ループの内5人が死亡したものである。ネパールに脱出しようとする殆どのチベット人
が使用する、標高5700mのナンラ峠でこの事故は発生した。6人目の死亡者は、
12月24日、腰まで雪に埋もれてネパールにたどり着こうとした2番目のグループの
中から出た。

第1のグループは22人のチベット人で構成されており、その内の6人が子供、7人が
女性であった。彼らが12月3日に雪嵐に襲われたとき、エベレストの西方100km
に位置するナンパラ峠を越えていたが、まだ標高の高い山中にいた。

雪嵐の3日間、このグループは動くことができなかった。4日目に歩き始めたが、積雪
は1mを越えており所によっては胸までの深さがあったと、生存者は語っている。

12月9日、1日半歩き続けた所で、10才の少年カロとシロという名の同年の少女
が、飢えと寒さのために死亡した。やがてシロの姉で11才のプルプ・ドルマも死亡し
た。子供たちの遺体は、毛布に包まれ山中に置き去りにされた。

12月10日峠から3日間山を下り、グループは小さなネパールの村に着いたが、4人
目の子供を救うには遅すぎた。11才の少女ドルマが、その日の午後1時半頃に死亡し
た。

子供たちは、亡命政府がインドに開設している学校で勉強をするために送り出されたも
のであった。そして年長の人々の多くは、インドの僧院や尼僧院に入りたいという希望
を持って、脱出して来たものである。毎年亡命政府の学校に入るために、非合法的に送
り出されている14才以下の少年少女の数は、400人から500人に上っている。

東チベットのカンゼ出身の16才の僧侶も、ネパールとの国境の山を越えた直後に死亡
した。ナムチェ・バザーの南方20kmに位置するカリ・コラの村から、仲間たちが彼
を担いでその地域の病院に運んだが、12月25日に死亡した。彼の死の原因を凍死だ
と伝えている報告もあるが、別の報告によれば急性の盲腸炎であった可能性もある。彼
の遺体は、彼が死亡したナンタラ村に埋葬された。

このグループの残りの人達は、この地域をトレッキングしていた2人の英国人観光客に
救助された。「私たちがレストランでお茶を飲んでいると、チベット人の女性がやって
来て隣に座った。彼女は靴を脱ぎ、足を私たちに見せたが、ひどい凍傷に罹っていた。
やがて仲間の人たちが到着したのを見ると、彼女よりももっとひどい症状の人たちもい
た」と、匿名希望の夫婦の観光客は語った。

スコットランドのエジンバラから来ていたこの夫婦は、この23才のチベット人尼僧を
運ぶために4人のポーターを雇い、カトマンズー北東140kmに位置するナムチェ・
バザー近くの、クンデの病院に運んだ。この病院は、エドワード・ヒラリー卿によって
創設されたものである。

また観光客の1人は、そのグループで生き残った人の中で最年少の、11才の少年を徒
歩で半日掛かる病院へ運んだ。その後、そのグループを追いかけ、彼らが地元の警察と
連絡を取るのを助けた。警察は馬を用意して、彼らを近くの難民キャンプへ運び、後に
カトマンズーに送った。彼らは、12月の29日にカトマンズーに到着した。

そのグループの生存者たちは、カトマンズーで凍傷の治療を受けた。その内の1人東チ
ベット出身の22才の青年タガは、膝の直ぐ下で両足の切断手術を受けた。専門医は、
「私が目にした最悪の病状だ」と語った。

20才代の2人の青年も、片足あるいは両足のつま先の切断手術を既に受けている。そ
の他にも3人が、つま先か足の一部を失うことになっている。難民たちは厚い防寒着を
着ていたが、履いていた靴は薄手のものかランニングシューズであった。

12月21日、2才の幼児死亡

6番目の死亡者の知らせは、12月24日、カトマンズーの北西130kmのヌブリ地
区にある、難民キャンプから発せられた。26人のチベット人から成るこのグループ
は、地元の村人によって保護された。しかし3日前に、2才の幼児が凍死していた。国
境を越えた所で、腰までの深さの雪の中を歩かなければならなかったという。

「12月25日の朝私たちがまだ家の中にいる時に、2人のチベット人がやって来て凍
傷の薬を欲しいと言うのです」と、韓国からやって来た29才の登山家のヒュン・ウー
・キムは語る。彼は、8100mのマナスル山登攀に挑戦をし、帰途村に滞在してい
た。「我々は、そのグループを見に行きました。1人の男性と2人の女性が足とつま先
に凍傷を負っていました」と、彼は語る。

韓国人と地元のシェルパ人は、3人の凍傷に手当を施し、さらに2人をヘリコプターで
カトマンズーに搬送した。同登山隊の1人が座席を譲ることを申し出、また登山隊の荷
物をヘリコプターから降ろす等して、2人分の座席を確保したのであった。荷物はその
後、陸路でカトマンズーに運ばれた。

カトマンズーに空路運ばれたチベット人の1人は、東チベット出身の14才の少女タシ
・ツォモで、右足の指を全部失うことになりそうである。また同地域出身の少年が、足
の指の何本かを失うことになりそうだと、カトマンズーからの報告は伝えている。

そのグループの残りの者たちはカトマンズーに到着し、国連高等難民弁務官は1月2日
にインドへの通行を許可し、チベット亡命社会に行き着けるように通行を保証した。
「我々は、彼らを助ける以外に道はなかった」と、韓国の登山家キム氏は語る。「彼ら
は、我々韓国人にとても良く似ていた。我々は、同じ祖先を共有しているのだと思う。
我々は皆が、彼らのことをとても心配した」と、彼は語った。

キム氏は、難民を救うためにわざわざ出掛けて行った地元のシェルパ人たちを称えてい
る。また英国の観光客たちは、カリ・コラの警察が良心的で進んで救援の手を差し延べ
たと語っている。

カトマンズーの警察は、チベット難民たちを国連高等難民弁務官の手に委ね、保護を要
する難民と判断された者たちはインドに旅立つことが許可された。国境では難民たちが
警官に脅されたり、賄賂を要求される等の報告が相次いでいる。昨年11月に起きた事
件では、11人のチベット人が2万ルピー(320米ドル、4万円)の賄賂を要求され
て、これを断りネパール警察によって強制送還された。しかしながら、最近はネパール
警察も協力的になって来た、との報告も多く寄せられるようになっている。

昨年は、2200人のチベット難民がネパールに到着したが、その内のおよそ半数は最
後の3カ月に集中している。昨年到着した難民の内、およそ500人が14才以下の子
供たちで、インドの学校あるいは僧院に入るように送り出されたものである。また約
1000人が僧侶あるいは尼僧であった。脱出者の数は、収穫の時期が終わって、冬季
に入ると急増する。冬の間は国境の警備が緩む為、であることは明らかだ。

以上

(翻訳者 小林秀英)


英語の原文はTibet Information NetworkのホームページまたはWorld Tibet Network Newsで読めます。

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