日本からの支援の経緯<2003年>

今年もまたチベットへ出発する直前まで仕事に追われ、支援の呼びかけらしきことがほとんどできなかったにもかかわらず、さまざまな方々が支援金をお寄せくださいました。本当にありがとうございました。今年は中国元で7000元(だいたい10万円)、タシ・ツェリン氏に渡してきました。これまでずっと日本円で渡してきたのですが、とくに意図して中国元にしたわけではなく、準備の関係で結果的に中国元になっただけです。領収書はこちらでご覧ください。

プロジェクトの主宰者タシ・ツェリン氏は今年も元気そうでした白内障治療も順調。7月だったか、「入院した」という噂を聞いていたのですが、手術の後しばらく、近所のキチュ・ホテルで(ちゃんとしたベッドがあって、静かなので)静養していたことがわかりました。

タシ・ツェリン氏宅といえば、ラサで最も濃いチャン(どぶろく)を出すチャン屋として知られていますが(?)、時代の流れというか何というか、親戚がプラスチックボトル入りチャンを開発することに成功し、間もなく売り出すとのことです(右の写真。2004.09.26アップ)。ブランド名は“アマ・チャンマ”。味はチャン屋で飲むよりも少々甘めですが、ワインのようで、日本では女性にウケたりするかもしれません。−−と思っていたら、すでに缶入りチャン(ラサの金田酒業が製造)も発売になっていました。僕が先に発見して、すぐタシ・ツェリンのところにご注進に行ったのですが、さすがに驚いていました。

タシ・ツェリン氏のここ数年の方針は、ナムリン県に新たに学校をつくることはせず、エマガン職業訓練学校の運営を軌道に乗せることと、教師などを目指してラサで学ぶナムリン県出身の学生のための基金「T.T. Fund」(農牧区奨学基金会)を起ち上げることです。T.T. はタシ・ツェリンの頭文字ですね。

「T.T. Fund」の一環として、ラサのツェモリン地区の北京東路沿い(キチュ・ホテル対面あたり)に昨年購入したビルが完成し、めでたく満室でスタートしました。4階建てビルの1ブロックを買い取ったもので、家賃から得た収益が「T.T. Fund」基金として活用されます。タシ・ツェリン氏によると、家賃収入は年間23万元。購入にあたっては中国銀行から低利で融資を受けており、5〜6年で完済できる見込みとのことです。

ビル壁面にある「T.T. Fund」の文字は、1文字あたり100kgあるそうで、良質の材料(何だったか忘れました)を使いチベットの伝統工芸技術で作ったものだと自慢していました。変なところに金かけてますね(笑)。テナントのひとつに「チベタン・マッサージ」の店(2階)がありますが、どういうものなのか今回は体験しそびれました。(2004.09.26追記:目の不自由なマッサージ師によるマッサージとのことです)

自伝“The Struggle for Modern Tibet”に詳しく書かれていますが、タシ・ツェリン氏は1960年代、社会主義によるチベットの改革を夢見て、留学先のアメリカからチベット(中国)へ帰国しました。氏はそのときの船の中などで大量の文章を(英文タイプで)書き溜めていて、現在それらを、当時のさまざまな資料とともに読み返して、まとめる作業をしています。

また、“The Struggle for Modern Tibet”の編者のひとりであるWilliam R. Siebenschuhがかねてからまとめていた“The Struggle for Education in Modern Tibet: The Three Thousand Children of Tashi Tsering” (Mellen Studies in Education)も今年10月に出版されました。ナムリンの教育プロジェクトに絞った内容になっているとのことです。128ページで$89.95と、えらく高価なので、まだ入手してませんが。