湯けむり尼寺紀行
(1999年夏+2000年夏・2年連続テルドム温泉)

アムネスティ日本のチベット・グループ発行の『ちべっとニュースレター』3号に掲載されたものに加筆し、写真を加えたものです。

 日本人は、やっぱ温泉だよね〜。
 というわけで、チベットで温泉に行ってきた。温泉がキモチいいというのは世界共通の感覚(?)。チベットにも温泉でリラックス♪というカルチャーがちゃんとある。
 有名なのは地熱発電所のあるヤンパチェン(羊八井)だが、今回行ったのは、ラサから東へ四駆車で5時間ほど走ったところにあるテルドム温泉。
 チベットに密教を伝えたグル・リンポチェという行者がいるのだが、テルドムは、将来時が満ちたときに発見されるはずの埋蔵経典(テルマ)を埋めたとされる聖地の一つ。緑豊かな渓谷に尼寺があり、山麓に温泉が湧き出ている。

←テルドム尼僧院と温泉のある渓谷


 チベットとはいえ、基本的には日本の温泉とたいして変わらない。
 こんこんと湧き出ている温泉を、自然の川の流れをうまく引き込んでうすめた、40度ぐらいの露天風呂だ。
 あいにく雨期(8月下旬)で曇っていたため外気は少々寒かったが、温泉は快適な暖かさ。しかも、お湯は澄んでいて、きれいだ。深さは、へそ上5センチぐらいだったかな。
 浴場は男女に分かれていて、周囲には(いちおう)柵がある。脱衣のためのベンチや洋服掛けなどもある。一部コケが生えていて滑りやすい部分もあるので注意注意。いっしょに行ったチベット人ガイド・ギャルツェンは潜ったり泳いだりしていた。

 全身で浸かる場所とは別に、脚だけ(膝ぐらいまで)浸かれるスポットもあるので、カゼひきそうという方はそっちをトライ。ただし、チベット人巡礼たちはそこで鍋釜や野菜を洗っている。
 ところで、酸素の薄い海抜4500mの地で、心臓に負担をかける長湯は、実はあまりほめられたものではない。
 そのとき1ヵ月近くチベットにいた僕も、温泉のまわりの草原をさんざん歩いた末、けっこう長くお湯に入っていたら、夜中に息苦しい思いをした。
 息苦しくなって目が覚める恐ろしさ。
 ギャルツェンによると「湯に入る前に水をたっぷり飲んで、ちゃんと食事しておくように」――翌朝そう言っていた。先に言えよ。
 というわけで、ちゃんと高地適応してから行かないと、せっかく温泉に入っても、辛いことになってしまうから注意が必要だ。

 温泉周辺には雄大な大自然が広がっていて、これも見もの。ヤクや羊が遊び、高山植物が咲く草原のある丘が広がっている。天気さえよければピクニックまたはハイキングにぴったり。
 裏手の丘を30分ほど(歩いて)のぼると遊牧民のテントもある。いきなり近寄って行くと、番犬(でかい!)に追いかけられるので注意。そのさらに上のほうには、尼寺のお堂や尼さんの僧坊などもあるから、余力があったら訪ねてみよう。


 ▲ゲストハウス


▲必要最小限の設備!


▲客室担当の尼さん

 せっかくのテルドム温泉。ぜひともゆっくり1泊以上はしたいものだ。
 温泉のすぐ隣りにゲストハウスがある。お世話をしてくれるのは、人なつっこい尼さんたちだ。
 部屋にあるのはベッドとシーツ・布団、そして魔法瓶に入ったお湯のみ。お湯は、なくなったら尼さんの僧坊にもらいにいく。浴衣やスリッパなどは置いてない。ベッドやシーツは日本人的基準ではかなり「汚い」部類なので、寝袋が必要かもしれない。
 また、電気がないので、懐中電灯は必須。いちおうロウソクはくれるけど。周囲に食堂はないので、食料はすべて持ち込む。
 トイレは、いちおうある。が、ゲストハウス周辺は犬だらけなので、夜トイレに行くのはちょっと怖いかもなあ。まあ、だれも見てないから、そのへんでしちゃえばいいんだが。
 海抜が高くて、天気によっては非常に冷えるので、防寒の用意は必須。暖かくて天気のいいときなら、テント泊も楽しいかもね。

▲犬!
▲ヤク!


このページのトップへ
I love Tibet! ホームページ