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ラサはチベットにしては水も緑が豊かな街。 木々は弱々しくて頼りなさげだが、しっかり根を張って枝を伸ばし、緑の葉を繁らせている。 陽射しの暑い日も、木陰に入ると、とたんにひんやりした空気に包まれる。 チベットの別名“涼しい国”(シルジョン)を実感させてくれる。 |
ところで、ずいぶん長いことラサに頑固に根を張り、存在感を誇る“緑”がある。軍人の制服や車両たちだ。7月のある日、ポタラ宮の前の広場に行ったら、緑色のトラックと軍人たちが大集合していた。アドバルーンがあがり、「武警西蔵総隊慶祝建軍76周年文芸聯歓」の横断幕がある。趣旨はともかく、武装警察隊員たちの慰安イベントといったところだ。 |
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周りではチベット人たちが大勢見物しているし、「糾察」の章をつけた軍人が何人か立っているだけで緊張感はない。ステージ上では、チベット人の歌や踊り、軍隊生活をネタにした寸劇などが披露され、武警隊員たちは大いにウケていた。おそらく偉いと思われる軍人が、とんでもなくヘタな歌をカラオケで歌ったときには、広場は爆笑に包まれた。実に、のどかな雰囲気だった。 |
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イベントが終わると、隊員たちは座っていたプラスチックの椅子を手に、整列してトラックの荷台に乗り込んで去っていった。ステージ両側に陣取っていた戦車と装甲車も、ポタラ宮の前を走る北京路に出て、郵便局の角の交差点をゆっくり右折して去っていった。 |
名刹セラ寺はラサの北側の山のふもと。 街の中心部とセラ寺との間あたりにある小さな寺がタプチェ・ラモ寺だ。 規模こそ小さいが、門前はご本尊“ラモ”にお供えする酒は香炉で炊くサン(香草)を売る露店でにぎわっている。 いかにも庶民の俗世信仰の場だ。 |
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門を入って右手が、いつもにぎわう酒くさい“ラモ”のお堂、左手が本堂。最近人気のご本尊のおかげか急ピッチで再建が進んでいる。新しい仏像が供えられ、壁画も立派になった。が、仏像はすべてガラスケースに入れられ、あやしげなマッサージ屋のような紫色の蛍光灯が目に付く。昔ながらの、おどろおどろしい雰囲気は失われてしまった。 |
ラモちゃんに酒とカタを供えて、本堂の真新しい忿怒尊たちに挨拶したら、なにげにハシゴを上って屋上に出る。 寺の裏手には、緑の小立が繁り、茶色い屋根の、やけにきれいな建物が並んでいるのが見える。奥の方は小立に覆われていてよく見えない。 これは何かというと…… |
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「西蔵自治区監獄」。チベット一、過酷と言われるダプチ(タプチェ)刑務所だ。ゲートはタプチェ・ラモ寺のすぐ隣り。チベット人政治囚も大勢投獄されている。 |